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ギリシャ.ヘルマン.ホシガメの飼育

はじめに

●陸生のカメは、いわゆるリクガメ(陸ガメ)と呼ばれ、以前はマニアが飼育する高価なペットとして扱われていました。しかし、現在は簡単に飼える初心者用飼育セットも市販され、さらにカメの価格も下がったことから、飼育頭数が増えてきました。爬虫類の中では珍しく草食であることが人気に拍車をかけているのでしょう。
リクガメ

●日本では、ギリシャリクガメ、ヘルマンリクガメ、ヨツユビリクガメ、ホシガメが、綺麗な甲羅の模様と愛くるしい顔で人気があります。

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ギリシャリクガメ

●ギリシャリクガメは背甲の模様がギリシャ織のようにみえることが名前の由来で、学名のgraecaはギリシャという意味です。
●分布域は広く、10種以上の亜種が知られ、亜種によって大きさや色などが異なります。しかしながら、亜種の分類が混沌としており、独立種としての意義も唱えられています。ペットとして販売時に明記されている流通名は、必ずしも正確な亜種名とは限らないのです。
  

ギリシャリクガメの亜種の鑑別はプロでも難しい

1分類

カメ目リクガメ科チチュウカイリクガメ属
学名:Testudo graeca
英名:Greek tortise,Spur-thight tortoise

2分布

ヨーロッパ南部、アジア南西部および西部、アフリカ北西部、地中海諸島

赤:ムーア、オレンジ:コーカサス、水色:アラブ、ピンク:イラン、緑:ニコルスキー

ギリシャリクガメはギリシャに住んでいない

3生態

環境:分布域が広く、森林や草原、山地等の比較的乾燥した地域
行動:昼行性で昼間に活動し、夜は窪みのある穴で過ごす。亜種や個体群によって、冬眠で越冬するものもいます〔安川 2000,安川2002〕。
食性:草食性で、主に植物や低木の葉を食べています。
寿命:40~50年

4身体

甲長:20~30cm(最大甲長約36㎝)

5特徴

5‐1性格

●基本的に神経質で、臆病なカメです。飼育することで人に応じない個体になることが多いです。

5‐2身体特徴

●背甲は暗褐色で黄褐色のギリシャ織のような模様が入っていますが、亜種や個体群によって模様は不明瞭になり、かつ全体が黄色あるいは黒褐色になることもあります。
ギリシャリクガメ
●亜種の鑑別が難しいため、甲羅が黄色を帯びるものをイエローギリシャリクガメ、黒褐色を帯びるものをブラックギリシャリクガメという単純な流通名で呼ばれることもあります。

ギリシャリクガメ

イエローギリシャリクガメ

ギリシャリクガメ

ブラックギリシャリクガメ

イエローギリシャ、ブラックギリシャでも良いのでは?

●亜種によっては、お尻の甲羅が外側へ張り出しているものもいます。
●腹甲の各甲板に黒褐色のまだら模様が入ったりたり、変異が大きいです。
ギリシャリクガメの腹甲  ギリシャリクガメの腹甲
●全ての亜種に共通して共通して腹甲に1つの蝶番があります。
ギリシャリクガメの蝶番  ギリシャリクガメの蝶番
●後足と尾の間にそれぞれ突起状の鱗(蹴爪)があり、英名のSpur-thighed tortoiseの由来になっています〔安川 2000,安川2002〕。
ギリシャリクガメの蹴爪  ギリシャリクガメの蹴爪

6亜種

●多くの亜種の中で、本邦に輸入される数が多い種類は、アルジェリアギリシャリクガメ、トルコギリシャリクガメ、アナムールギリシャリクガメ、アラブギリシャリクガメである。他にもキレナイカギリシャリクガメ、モロッコギリシャリクガメ、チュニジアギリシャリクガメ、ニコルスキーギリシャリクガメ、ダゲスタンギリシャリクガメ、ザグロスギリシャリクガメ、スースギリシャリクガメ、イランギリシャリクガメ、アンタキヤギリシャリクガメ、アルメニアギリシャリクガメ、カスピギリシャリクガメ、ランバートギリシャリクガメ、レバントギリシャリクガメ、ニコルスキーギリシャリクガメなどが知られています。

ムーアギリシャリクガメ(T.g.graeca

●ギリシャリクガメの基亜種で、アルジェリアギリシャリクガメやグラエカ種という流通名があり、亜種の中では小型です。
●アルジェリア北部~モロッコ北東部、そして一部スペイン南部の山地に生息しています。生息場所によっては冬眠しません〔安川 2000,安川 2002,Ernst et al.1999〕。
●背甲のギリシャ織模様は、成長に伴い不明瞭になり、暗~灰褐色を帯びる個体が多く(ブラックギリシャリクガメ)、お尻の甲羅はフレアー状に外側へ張り出しません。
ムーアギリシャリクガメ

コーカサスギリシャリクガメ(T.g.Iberia)

●亜種の中で最も大型になる亜種で、トルコギリシャリクガメやイベラ種という流通名があります。
●アゼルバイジャン、ロシア西部に生息し、基本的に冬眠します〔安川 2000,安川2002〕。
●背甲のギリシャ織模様は多彩ですが、暗色の模様が多く入るようになり(ブラックギリシャリクガメ)、腹甲全体にも模様か多いです。
アラブギリシャリクガメ  アラブギリシャリクガメ
●お尻の甲羅はフレアー状に張り出し、特にオスでは外縁は尖ることもあります。

アナムールギリシャリクガメ(T.g.anamurensis)

●トルコ中南部の地中海沿岸性気候の低地に生息し、基本的に冬眠はしません〔安川 2000,安川 2002〕。
●大型の亜種で、背甲のギリシャ織模様は不規則で、全体が暗褐色になる個体が多いです(ブラックギリシャリクガメ)。
アナムールギリシャリクガメ
●お尻の甲羅はフレアー状に張り出し、背甲は上からみると台形のようです。
アラブギリシャリクガメ

アラブギリシャリクガメ(T.g.terrestris)

●テレストリスギリシャリクガメという別名もあり、亜種の中では小型で、全体的に丸みを帯びています。
●シリア、トルコ南西部、イラク北西部の、ステップ気候や地中海性気候の地域に生息し、ギリシャリクガメの中でも最も寒さに弱いため、基本的に冬眠させないでください〔安川 2000,安川2002〕。
●背甲のギリシャ織模様が不明瞭になることも多く、全体が黄色あるいは黄褐色になります(イエローギリシャリクガメ、ゴールデンギリシャリクガメ)。
アラブギリシャリクガメ  アラブギリシャリクガメ
●お尻の甲羅はフレアー状に張り出しています。
アラブギリシャリクガメ

キレナイカギリシャリクガメ(T.g.cyrenaica)

●キレーナギリシャリクガメとも呼ばれ、リビア北東部のキレナイカ高原に生息し、亜種の中では小型です。
●背甲はギリシャ織模様にはならずに、大小の不規則の暗色の模様が散らばっており、腹甲の模様も不規則に入り、一部連続しています。
キレナイカギリシャリクガメ キレナイカギリシャリクガメ
●お尻の甲羅はフレアー状に張り出しています〔安川 2000,安川 2002〕。
キレナイカギリシャリクガメ

ヘルマンリクガメ

●ヘルマンリクガメは外貌がギリシャリクガメと似ていますが、黄褐色と黒褐色の模様が明瞭です。
ヘルマンリクガメ
●ギリシャリクガメとともに人気のある種類です。

1分類

カメ目リクガメ科ヘルマンリクガメ属
学名:Eurotestudo hermanni
英名:Hermann’s tortoise

2分布

ヨーロッパ南東部、地中海諸島

3生態

環境:森林や低木のある草原などの比較的乾燥した地域
行動
・昼行性で、昼間に活動し、四季のある地域にいるため、冬眠して越冬しますが、南部に分布する個体は冬眠しないこともあります。
・夜は窪みのある穴で過ごします。
・亜種や個体群によって、冬眠で越冬するものもいます〔安川 2000,安川2002〕。
食性:草食性で、主に植物や低木の葉を食べています。
寿命:40~50年

4身体

甲長:15~20cm

5特徴

5‐1性格

●性格は温和なカメで、噛みつくことはまれです。

5‐2身体特徴

●背甲は黄褐色で黒褐色の模様が入り、ギリシャリクガメの甲羅の模様と比べるとより明確です。
ヘルマンリクガメ
●腹甲にも黒褐色の模様が入っています。
●ヘルマンリクガメとギリシャリクガメとの違いは、ヘルマンリクガメの臀甲板は2枚ですが、ギリシャリクガメは1枚です。
●ギリシャリクガメにある後足と尾の間に突起状の鱗が、ヘルマンリクガメにはありません〔安川 2000,安川 2002〕。

ヘルマンリクガメ

ヘルマンリクガメ

ギリシャリクガメ

ギリシャリクガメ

6亜種

●古くからニシヘルマンリクガメ、ヒガシヘルマンリクガメの2亜種が知られていましたが、現在ヒガシヘルマンリクガメからダルマティアヘルマンリクガメが分離され3亜種になりました〔安川2008,安川2011〕。
●ペットではヒガシヘルマンリクガメが多く流通していますが、亜種間の交雑種も多いことから、純粋な亜種が減ってきています〔安川2008,安川2011〕。
●ヒガシヘルマンリクガメとニシヘルマンリクガメには鼠蹊甲板がありますが、ダルマティアヘルマンリクガメにはありません〔安川2008,安川2011〕。
ヘルマン鼠径甲板

ニシヘルマンリクガメ(E.h.hermanni)

●ヘルマンリクガメの基亜種で、ヒガシヘルマンリクガメと比べて一回り小さいです。
●甲羅の黄褐色と黒褐色の模様のコントラストが明瞭で、背甲の黒色の領域が多いため、全体的に黒くみえます〔安川 2000,安川2002〕。
  ニシヘルマンリクガメ
●腹甲の暗色の模様が繋がって、太い帯状になっています〔安川 2000,安川 2002〕。

●顔に明色の黄色の斑紋が入る個体が多いです。
●イタリア北西部、フランス南部、スペイン領のバレアレス諸島の比較的乾燥地帯に生息し、温暖な地域にいる個体群は冬眠をしません〔安川2000,安川2002〕。

ヒガシヘルマンリクガメ(E.h.boettgeri)

●ヘルマンリクガメの中で最大種です。
●旧ユーゴスラビア、ブルガリア、アルバニア、ギリシャおよびトルコ西部に生息し、比較的降水のある地域であるため、湿気に対しては強いです。基本的に冬眠します〔安川2000, 安川2002〕。
●ニシヘルマンリクガメと比べて、甲羅の模様のコントラスが不明瞭です。
  
●腹甲の暗色の模様は甲板ごとに分かれ、繋がらないか、あるいは一部でのみ繋がっています〔安川2000, 安川2002〕。
ヒガシヘルマンリクガメ

ヨツユビリクガメ

●中央アジアに分布し、低温にも強いため温度の適応範囲が広く、カメ自身もそれほど大きくならないことから、日本での飼育に最も適した陸ガメといわれています。
●旧ロシア領に分布していたことから、ロシアリクガメと呼ばれ、学名からホルスフィールドリクガメとも呼ばれ、別名が多いです。

1分類

カメ目リクガメ科ヨツユビリクガメ属
学名:Agrionemys horsfieldii
英名:Central asian tortoise,Horsfield’ tortoise,Four-clawed/toed tortoise
別名:ホルスフィールドリクガメ、ロシアリクガメ

2分布

ロシア南東部、中央アジア、西アジアの一部、中国北西部

3生態

環境:低木のある草原、岩石砂漠、岩場の多い丘陵地帯等など様々な場所に生息(ステップ気候、砂漠気候、地中海性気候と幅広い気候)
行動
・昼行性で、昼間に活動し、深い巣穴を掘って暑いな昼や夜は休んでいます。
・分布域の北部や高地にいる個体は冬眠し、南部や乾燥地帯にいる個体は夏眠します。南部に分布する個体は冬眠しないこともあります〔安川2000,安川2002〕。
食性
・草食性で、植物の葉、果実、花などを食べています。
・寿命:40~50年

4身体

甲長:20~25cm

5特徴

5‐1性格

●性格は温和なカメで、噛みつくことはまれです。

5‐2身体特徴

●甲羅は丸みを帯び、長さと幅はほぼ同じで丸くみえます。全体的に扁平な甲羅をしています。
ヨツユビリクガメ  ヨツユビリクガメ
●背甲は暗黄色~暗茶褐色で、各甲板には暗褐色の模様が入ります。
ヨツユビリクガメ  ヨツユビリクガメ
●腹甲は背甲と同じ褐色系で、暗褐色の模様が入ります。
ヨツユビリクガメ
●頭と四肢は黄色みを帯びています。
メロンパン

メロンパンみたいなヨツユビリクガメ

●地中性が強く、前足は頑丈なシャベル状で、穴を掘ることに適しています。
●指は4本であることから、ヨツユビリクガメと呼ばれています〔安川2000,安川2002〕。
ヨツユビリクガメ指

6亜種

●ヨツユビリクガメはアフガニスタンヨツユビリクガメ、バルキスタンヨツユビリクガメ、カザフスタンヨツユビリクガメ、トルクメニスタンヨツユビリクガメの4亜種が知られていますが、アフガニスタンヨツユビリクガメ以外の鑑別は困難です。

アフガニスタンヨツユビリクガメ(A.h.horsfieldii)

●アフガニスタン、イラン、ウズベキスタン、中国(新彊地方)などに分布しています。
●背甲は暗黄色~明黄色で、背甲の暗色の模様は不明瞭もしくは模様がない個体が多いです〔安川 2000,安川 2002〕。

カザフスタンヨツユビリクガメ(A.h.kazachstanica)

●ウズベキスタン、カザフスタン、トルクメニスタンに分布しています。
●背甲は扁平で幅広く、前後の縁が直線的で正方形にみえます。
●背甲は明黄色や薄黄緑色などと変異が大きく、暗色の模様は大型です〔安川2000,安川2002〕。
カザフスタンヨツユビリクガメ

ホシガメ

●ホシガメは背甲の放射状の模様が星の様にみえることが、和名やホシ、英名のStarの由来になっています。
●ホシガメにはインドホシガメとビルマホシガメがいますが、ペットではインドホシガメの流通量が圧倒的に多いです。

インドホシガメ

●単にホシガメとも呼ばれるのはインドホシガメです。インドホシガメは過去に密輸によって大量に流通し、不当に安価に流通していました。

インドホシガメ
●幼体はピンポン玉のように丸くて可愛く、また特別に大きくならないことから、ビギナーが衝動買いをし、劣悪な状態で輸送されたためか、状態が悪く早死にさせるケースが多かったです。
ホシガメ

ビギナーにはちょっと難しいホシガメ

1分類

カメ目リクガメ科リクガメ属
学名:Geochelone elegans
英名:Indian starred tortoise
別名:ホシガメ

2分布

インド南東部、スリランカ、インド西部とパキスタン南東部
インドホシガメ

3生態

環境
・乾季と雨季のあるサバンナや森林、あるいは砂漠の周囲や熱帯雨林の湿地帯など幅広いです。
・熱帯雨林以外では基本的に雨季と乾季があり、雨量の季節的較差が大きい地域(モンスーンによる降雨のピークが地域によって異なります)〔安川2001,安川2011〕。
行動
・昼行性で、乾季などは朝方や夕方にのみ行動します。
食性:基本は草食性で、主に草、木の葉、多肉植物、花などを食べています。しかし、幼体は動物食の傾向もあり、巻貝、ミミズ、ナメクジなどの軟体動物も食べている報告があります〔安川2001,安川2011〕。
寿命:40~50年

4身体

甲長:15~30cm(最大38cm)

5特徴

5‐1性格

●性格は温和なカメで、噛みつくことはまれです。

5‐2身体特徴

●背甲は黒色~暗褐色で、甲板に灰褐色や黄褐色の放射状の模様が入り、星のようにみえます。
インドホシガメ   インドホシガメ
●星形の模様をつくる放射状の細い線は6~12本です(基本は6本ですが、成長とともに増える個体もいます)〔安川2001,安川2011〕。
インドホシガメの背甲
●腹甲にも、成長とともに背甲と同じような星型の模様が入ることがビルマホシガメとの鑑別点です。
インドホシガメ腹甲 
●学名のelegansは優雅なという意味で、星型の模様に由来します。この模様は、落ち葉などの間や、森林の木漏れ日のあたる場所では保護色となります〔安川2001,安川2011〕。
●背甲はドーム状に盛り上がり、上からみるとやや細長いです。成長するにつれて凹凸することが多いです。
インドホシガメ
●頭や首、手足、尾の色は黄褐色で、不規則に細かい黒色の小さいまだら模様が入ります〔安川2011〕。
インドホシガメ斑紋

ビルマホシガメ

●乱獲のため生息数が少なくなり、2013年からワシントン条約の附属書Iに掲載され、商業的取引が禁止されました。現在飼育するためには、マイクロチップを入れて、届けが必要になりました。
●野生ならびにペットの流通個体も多くないため、生態などの詳細が不明な点が多いです。

1分類

カメ目リクガメ科リクガメ属
学名:Geochelone platynota
英名:Burmese starred tortoise
ビルマホシガメ

2分布

ミャンマー中央部
ビルマホシガメ

3生態

環境
・熱帯モンスーン(弱い乾季のある熱帯雨林:4~10月が雨季/12~3月が乾季)の森林やその周辺〔安川2001,安川2011〕
活動
・薄明薄暮に活動しますが、乾季にはあまり活動しません。
食性
・草食に近い雑食と考えられ、主に植物の葉やキノコなどで、昆虫やミミズなどの軟体動物も食べることもあります〔安川 2001,安川2011〕。
寿命:40~50年

4身体

甲長:最大甲長26㎝

5特徴

5‐1性格

●性格は神経質で、大人しいです。

5‐2身体特徴

●背甲はドーム状に盛り上がり、インドホシガメよりも細長いです。
●背甲にはインドホシガメと動揺に星型の模様が入りますが、ビルマホシガメの斑紋の数は6本以下であること、腹甲には斑紋を欠き暗褐色の模様がみられることで鑑別します〔安川 2001,安川2011〕。
ビルマホシガメ

雌雄鑑別・繁殖

●成熟すると、身体の大きさ、尾の形ならびに総排泄孔(肛門)の形、甲羅などの二次性徴や行動によって雌雄が鑑別できます。

覚えて!体の大きさと尾で、雌雄が鑑別できます

1体の大きさ

●オスはメスよりも小さいですが、あまり大きさの違いは感じられないかもしれません。
リクガメの雌雄  リクガメの雌雄

2尾・肛門

●オスは総排泄孔(肛門)の近くにペニス(KW:ペニス)が存在するため、尾は長く太いです。興奮すると総排泄孔からペニスが出てくることがあります。
リクガメのペニス  リクガメのオスの尾

●ペニスの存在のために、オスの大きな尾は後ろからみると曲がっていることが多いです。
リクガメの尾  リクガメのオスの尾
●メスの尾はオスと比べて短く、後ろからみても曲がる長さではありません。
リクガメのメスの尾
●オスの総排泄孔(肛門)はスリット状で細長く、ペニスを出し入れするからです。メスはスリット状ではありません。

リクガメのオスの肛門

オス

リクガメのメスの肛門

メス

3甲羅

●オスのお尻の甲羅は折れ曲がって下垂していますが、メスは下垂していません。
リクガメオスの甲羅  リクガメのオスの甲羅

●腹甲の最尾側にある2枚1対の甲羅の開き具合でも鑑別ができますが、微妙です。オスは太くて長い尾を持つために広がっていますが、メスはその角度が狭いです。

リクガメ腹甲

右:オス 左:メス

●オスは腹甲がへこんでおり、これはオスがメスの背中に乗って交尾をし、ペニスをメスの総排泄孔に挿入しやすくするためです。
リクガメの腹甲のくぼみ  リクガメの交尾

●ヘルマンリクガメやヨツユビリクガメのオスの尾の先端には角質の突起がみられます。   ヘルマンリクガメのオスの尾の突起

4行動

●発情行動として、オスはメスの頭部や頸部、四肢に噛みついたり、メスの背甲にぶつかったり、乗駕する動作がみられます。

表:繁殖知識

項目 ギリシャリクガメ
〔Buskirk et al.2001,Pieau  1972〕
ヘルマンリクガメ
〔Eendecak 1995, Bertolero et al.2998〕
ヨツユビリクガメ
〔Pieau  1972〕
インドホシガメ
〔安川 2001,安川2011〕
繁殖形式 卵性 卵性 卵性 卵性
性成熟 甲長 約16cm
(オス:7ー8年,メス:12ー14年)
甲長約10cm
(約10年)
オス:甲長 12ー13cm(7ー10年)
メス:甲長約20cm(7-10年)
オス:6ー8年
メス:8-12年
繁殖期 北アフリカ:発情4‐5月(および秋),産卵5‐6月
ユーラシア大陸~中近東:産卵5-7月
発情:春以降 発情:春以降 発情:雨季(日本では7ー8月)
産卵数 5個(2‐8個)
3回/年
 2-12個/ 回 3-5個/回  2-10個/ 回
2-4回/年
性決定 温度依存的性決定(29.5℃以下オス、31.5℃以上メス、29.5ー31.5℃雌雄同比率) 温度依存的性決定(25‐30℃オス、33ー34℃メス、31ー32℃で雌雄同比率) 温度依存的性決定 温度依存的性決定

●カメの性成熟は年数ではありません。甲羅がどれだけ大きくなったかで決まります。野生で毎日エサにありつけませんが、ペットではエサの確保が保証されており、体が大きくなるのが早いです。表に記載されている甲長に達したら、オスは交尾ができ、メスは卵を産めるようになります。表には甲羅が成熟する年数も記載されていますが、ペットではずっと早くに成熟することが多いです。
●メスは性成熟して繁殖期を迎えると、オスの有無に関わらずに無精卵を産みますので、驚かないでください。
●カメの雌雄の決定は、卵の孵卵する時の温度で決まる温度依存的性決定というシステムです。

産卵  卵

メスは一人でも無精卵を産みます

飼育

●リクガメはとても繊細で、日本では存在しませんので、ペットとして飼育するためには適切な飼育環境をつくるために、様々な飼育グッツをそろえないといけません。
●性格がデリケートであるものが多く、環境が変わると慣れるまでエサを食べなかったりすることが多いです。

リクガメの飼育は水生ガメよりも難しいので勉強しましょう

●昼は日のあたる場所に移動して体を暖めていますが、これは温度を体に吸収して熱をつくり、太陽光に含まれている紫外線から、骨や甲羅の成長に役立てているのです。

1環境

1-1ケージ

●ケージは、アクリルやガラス製の水槽、衣装ケース、木製ケージ、園芸用の温室などを使用し、脱走できない高さがあれば蓋は不要です。もし必要とするならば通気性を確保するためにバーベキューネットのようなものがよいです。
リクガメ飼育 リクガメ飼育
●カメは緩慢なイメージがありますが、本来は広い自然界で生活をし、実際はとても活動的です。広いスペースで飼育することが理想ですが、具体的な飼育スペースの決まりはありません。幼体では小さい容器でも飼育できますが、成長具合によって、体の大きさにあった広さのケージを用意してください。
●ケージは、広ければ広い方がよいとしかいえませんが、反対に広過ぎると温度や湿度を保つのが難しくなります。大まかな目安ですが、ケージの幅と奥行きを足して甲長の約10倍以上あった方がよいでしょう。
リクガメ飼育
●それでも運動量がまかなえられない場合は、部屋の中で歩かせる方法もとられています。
●カメに広いスペースを与えることは、採餌、攻撃や威嚇、繁殖や求愛などの本能的な行動を発揮できるだけでなく、運動量が増えることで筋肉や骨が丈夫になり、胃腸の動きもよくなり、消化管のうっ滞なども予防できます。
●床敷にはデザートサンド、ピートモス、ヤシガラ土などの土砂系やウッドチップやパークチップなどの植物系を使用しますが、便宜性を優先的に考える場合は新聞紙などの紙やペットシーツでもよいです。

カメ黒土床敷

黒土

カメウッドチップ床敷

ウッドチップ

 

 

 

 

 

 

カメパークチップ床敷

パークチップ

●神経質な個体では体が隠すスペースが必要です。素焼きの植木鉢や市販のシェルター(KW:シェルター)を設置してください。特にヨツユビリクガメは地面に穴を掘って、その中で過ごす習性かあり、床敷を厚く敷くか、シェルターを必ず用意してください。
リクガメシェルター

1-2温度・照明

●カメの種類によっては日本の夏は暑すぎたり、湿度も高くなりがちです。冬は寒すぎたり、乾燥し過ぎることも多いです。温度と湿度の設定が難しいです。
●ケージ全体に爬虫類用紫外線ライトを設置し(KW:照明(紫外線))、爬虫類用赤外線ライト(KW:温度)をケージの端に照射して、局所的に高温の部分を作り、カメの体温を上げるホットスポットを設けます。

リクガメの飼い方


●一般的にリクガメの至適環境温度域は、ケージ全体を28~32℃、ホットスポットを33~38℃にし、温度勾配をつくってください。補助的に保温球やヒーターを使うこともあります。
●温度はしっかりと温度計で測定するべきです。そして、昼夜の温度変化に対して心配ならば、サーモスタットで温度調節することも可能です(KW:温度)。
●カメはホットスポットによって至適体温になると活動的になり、体温が上がりすぎると、温度の低い場所に移動します。
ホットスポット
体を温めるホットスポットをつくりましょう

●ライト類は朝に点灯し、夜間は消灯します。冬になると夜は気温がさがりますので、保温球やヒーターなどで補助的に保温対策をします。成体では夜に多少温度が低くなっても問題ありませんが、幼体ではなるべく昼と同じ位の温度を保つようにしましょう。
●薄明薄暮のビルマホシガメは明るすぎる環境が苦手であり、爬虫類類赤外線ライトは輝度が低いものを使用し、パネルヒーターなどでホットスポットの温度を設けるとよいです。
●季節的に屋外にカメを出せる春~秋であれば、昼間に太陽光を浴びさせてください。しかし、夏の熱中症や熱射病などには注意してください(KW:照明(紫外線))。

カメ屋外飼育

太陽光に勝るライトはありません

●紫外線も赤外線もでるメタルハライドランプは便利です。メタルハライドランプを使用する場合はケージの端に照射してください。
●ギリシャリクガメの一部、ヒガシヘルマンリクガメ、ヨツユビリクガメは11月頃から冬眠に入りますが、飼育下で冬眠させるかは、飼育者の考え、ならびにカメの状態にもよります。冬眠させない場合は、屋内にて適温で飼育してください。
●幼体から飼育する場合、小さいケージでは温度勾配をつくることが難しく、一方で広いスペースでは温度設定が難しいです。

1-3湿度

●陸生というイメージが優先して乾燥しがちな飼育環境をつくりたがりますが、最低限の湿度を保つことも考えてください。

表:湿度

湿度 種類
多湿 60-80% アカアシガメ、エロンガータ、セオレガメ、ムツアシガメ、
インドホシガメ、ビルマホシガメ、ゾウガメ等
やや乾燥 50-60% フチゾリリクガメ、ヘルマンリクガメ、ヨツユビリクガメ等
乾燥 40-50% ケヅメリクガメ、ヒョウモンガメ、チャコリクガメ、ソリガメ、
ギリシャリクガメ等

●理想の湿度は40~80%で、湿度が不十分で脱水が起こると、脱皮不全、消化管のうっ滞、腎不全ならびに痛風、膀胱結石の発症要因になります。
●湿度を保つためには、飲水用の水容器をケージ内におくだけでも多少は上がりますが、床敷で保湿性のあるヤシガラ土などを敷くのも一方法です(KW:湿度・飲み水)。
●ホシガメ類は雨季と乾季がある地域に棲息しているため、湿度に関しては様々な論議がなされています。基本的には乾燥した環境で飼育して朝夕に散水などの過湿の策をとる、あるいは雨季の期間が長く乾季は非活動的になるため、多湿な環境(湿度は60~80%)を作るべきともいわれています。

1-4温浴

●リクガメは陸で生活していて、ほとんど水に入ることはありません。しかし、ペットでは温浴をすることが勧められています。温浴をすると甲羅もきれいになり、そして食欲も出てきて、動きが活発になってきます。同時に水を飲むために、便秘になりがちのリクガメでは、排便もるようになります。
●リクガメの温浴は賛否両論で、してはいけないという考えも出ていますが、衰弱しているカメではおぼれさせないこと、そして、長時間の温浴でお湯が冷めて体が冷えないようにすれば問題ないと思います(KW:温浴)。
リクガメ温浴

1-5屋外飼育

●大きく成長すれば、ベランダや庭にカメを放して飼うことができます。
●屋外飼育は自然に近い環境で生活が送ることができます。太陽による自然光の恩恵をうけられ、自らエサや休む場所を求めて移動し、かなりの運動量になります。骨や筋肉がしっかりとするだけでなく、胃腸の動きもよくなります。リクガメにとって理想的な形だといわれています。
庭飼育
●屋外飼育は簡単に出来ることではなく、様々な準備が必要になり、注意することもたくさんあります。
●今まで屋内のケージで飼育していたリクガメを、突然屋外飼育に切り替えるのは危険です。週に数回屋外に出す時間を設け、徐々に慣らす必要があります。病気のカメや幼体は、無理して屋外で飼育しないでください。
●ベランダからの落下や庭からの脱走対策は必ず講じてください。
●ベランダでの飼育の場合、脱走しての落下事故が多く聞かれます。ベランダの周りを囲うなどの対策が必要です。
ベランダ飼育
●庭で飼育する場合、リクガメによっては土を掘って脱走する事もあるため、地中も30㎝ほど壁を埋めておくなど脱走対策が必要です。地面を掘ることを好むヨツユビリクガメでは、注意してください。
●犬や猫、鳥などの外敵からの攻撃にも注意しなければなりません。囲いを設けたり、金網で覆ったりするような対策が必要かもしれません。

●庭での飼育は、芝や草が生えた庭が理想で、日蔭となる低い植物などがあるとよいです。ベランダ飼育など、日が当たる場所と日陰を作り、床がコンクリートの場合は、床敷が必要になります。床敷を直にベランダの床に敷くと熱がこもるため、底上げ出来るものを用意しなければなりません。庭やベランダ飼育は、水が飲める環境も考えてください。
庭飼育 リクガメ庭飼育
●人の目が届かない所で、くず鉄、釘、針金、プラスチックの破片、小石などを食べると消化管閉塞を起こす可能性があるので注意してください。
●庭に生えている植物をカメが食べる場合は、農薬や殺虫剤の散布はしないようにしましょう。
ギリシャリクガメ
●冬眠する時期には、室内飼育に切り替えることをお薦めします。

2エサ

●陸生のカメの多くが草食性で、野菜を主食として与え、具体的にはカルシウムの含有量が高く、カルシウムとリンの比率も4:1~6:1のものが理想です〔Donoghueet al. 1996〕。果物は嗜好性が高いですが、与え過ぎには注意してください。
緑黄野菜 リクガメ採食 リクガメ採食
●カルシウムやミネラル不足は、紫外線不足と同様に甲羅や骨の成長に影響するため、カルシウムをはじめとする栄養剤をエサに添加する方法が定説となっています。
●ギリシャリクガメ、ヘルマンリクガメ、ヨツユビリクガメなは石灰岩の多い地中海沿岸に生息し、カルシウムが豊富な河川の水や土壌で育った植物を食べています。
●ビルマホシガメは昆虫や軟体動物も食べることがあるため、少量与えてもよいですが、無理に与えなくてもよいです。
●エサは、幼体および成体ともに毎日与えてください。
●1回に与えるエサの量は、実際にはカメの年齢や気温などに左右されるため、カメの様子をみて加減してください。
●野菜や野草はしおれたり、糞や尿がついてよごれるため、食べ残しはかたしてください。
●多くの陸生のカメは昼行性であるため、給餌時間は午前中が理想ですが、少なくとも消灯の2~3時間前には与えるようにしてください。
●陸生のカメ用のペレットも市販されていますが、蛋白質の含有が多く、給餌に関しては賛否両論です。

参考文献

■Bertolero A,Cheylan M,Hailey A,Livoreli B,Willemsen RE.Tetudo hermanni-Hermann’s Tortoise. Conserbation biology of fresh water turtles and tortoises.CRM5(4).059.1-20.2008
■Buskirk JR,Keller C,Andreu AC.Testudo graeca Linnaeus,1758-Maurische Landschildkröte.Handbuch der Reptilien und Amphibien Europas. 3.125-178.2001
■Donoghue S,Langenberg J.Nutrition.In Reptile Medicine and Surgery.Mader DR.WB Saunders Company.Philadelphia.p148-174.1996
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■Pieau C.Effets de la température sur le développement des glandes génitales chez les embryons de deux Chéloniens, Emys orbicularis L. et Testudo graeca L.C.R.Acad.Sci.Paris274(D).719-722.1972
■安川雄一郎.チチュウカイリクガメ属の分類.クリーパー.創刊号.クリーパー社.東京.p4-19.2000
■安川雄一郎.ホシガメの分類と生活史,およびその現状.クリーパー7.クリーパー社.東京.p4-17.2001
■安川雄一郎.チチュウカイリクガメの分類.クリーパー13.クリーパー社.東京.p4-23.2002
■安川雄一郎.ゾウガメと呼ばれるリクガメ類の分類と自然史(後編).クリーパー33,クリーパー社,東京.p16-29,32.2006
■安川雄一郎.旧リクガメ属の分類と自然史1.クリーパー59.クリーパー社.東京.p51-59.2011