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【どこにもないロリスの詳しくて信用できる知識と飼育】

スローロリスとピグミースローロリスの全てを語ります

1分類・生態

●ロリスはスローロリス属のサルの総称です。スローロリスとピグミースローロリスが有名で、両者は大きさや毛色などに地域による変異がみられ、亜種に分けるなどの諸説もあります。また、スローロリスはさらに、ベンガルスローロリス、ボルネオスローロリス、ジャワスローロリス、スンダスローロリス、レッサースローロリスの5つの亜種も報告されていますが、分類は流動的で確立されていません。

表:ロリスの分類

原猿類 ロリス科
スローロリス属
スローロリス ベンガルスローロリス
ボルネオスローロリス
ジャワスローロリス
スンダスローロリス
レッサースローロリス
ピグミースローロリス

●スローロリスは、インドネシア語で内気という意味の malu-malu と呼ばれています。英名のLoris はオランダ語の道化者(おどけ者)という意味で、動作がゆっくりしているために Slow Loris 命名されました。
●スローロリス属は2007年のワシントン条約の改正を受け、絶滅のおそれのある野生動物の「種の保存法」に関する法律の施行令が改正され、国内流通規制の対象となりました。販売・頒布目的の陳列及び広告、販売、譲渡等が原則として禁止され、あらかじめ個体を環境大臣の登録(登録票)を受けることにより、販売や譲渡が可能になります。個体登録を受けずに販売や譲渡をすると、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科せられます。
●環境大臣の登録票を受けるには、マイクロチップの挿入が必要になります。
●ペットショップやブリーダーから入手する際は、親個体の登録を受けているかどうか明確に確認した上で購入してください。

ロリスは登録票とマイクロチップが入っていないと飼えません

マイクロチップ挿入を希望であれば、エキゾチックペットクリニックまで、ご予約をおとりください

スローロリス

1-1分類

学名:Nycticebus coucang
英名:Slow loris

1-2分布

バングラデシュからベトナム、マレーシア、スマトラ、ジャワを経たボルネオ

ロリス分布地図

1-3身体

●頭胴長:26.5~38.0cm
●尾長:1.3~2.5cm
●体重:230~610g
●毛色:毛色の変異は大きく、全体的に茶褐色~灰色を帯びています。目の周りに黒色の輪と鼻には白色の筋が入ります、額から背中に沿ってお尻まで黒色の線が走っています。亜種の鑑別は難しいです。

亜種の鑑別難しすぎ💧

  

1-4生態

●環境:常緑林の熱帯雨林
●行動
・夜行性で単独で生活をしています。昼は枝分かれした木の間や、葉の密集した木の上で休んでいます。
生涯の樹上で過ごし、ほとんど地上に降りることはありません。

●食性:主食は樹液で、花蜜や果物を主食に、その他にも昆虫や節足動物、新芽や鳥の卵なども食べます。
●寿命:15~20年

ピグミースローロリス

1-1分類

学名:Nycticebus pygmaeusN.coucangpygmaeus
英名:Pygmy slow loris

1-2分布

インドシナ半島東部

1-3身体

●頭胴長:21.0~29.0cm
●尾長:0cm
●体重:オス 約462g、メス 約372g
●毛色:全体的に明橙色で、背中にわずかな白色の刺し毛がみられ、目の周りに黒色の輪と鼻には白色の筋が入っています。
  

1-4生態

スローロリスとほぼ同じです。

ピグミースローロリスはスローロリスを小さくしたやつ?

2特徴

2-1習性

●性格は穏やかで、動きはとても遅く、名前の通りにゆっくりと動きます。移動する時なども殆ど音を立てません。1本の手や足だけでも、木にかなり長時間ぶら下がることもできます。

ノロマなサル?

●動きが遅いと思いながら、エサをとる時や天敵に遭遇した時だけ、素早く動けます。獲物を捕らえるときは、両足で木や枝をつかんでおいて、素早く両手で捕まえます。飛んでいる昆虫を捕まえることもできるそうです。
●性格は温和ですが、威嚇や警戒した時に、「チッチッチッ」、「ジッジッジッ」、「ブーブー」などといった鳴き声を出します。また、威嚇で頭を素早くまわして噛みつこうとすることもありますので、油断しないでください。

やる時はやります!

●手や足に尿で濡らして、行動範囲の物や体に擦りつけます。これは特にオスでよくみられる縄ばりや自己主張を示すマーキングです〔Rowe  1996〕。
●特に体臭は強くないのですが、マーキングで尿を体に擦りつけることもあるため、オスではかなり臭います。

オスはオヤジ臭級に臭い?

2-2身体特徴

●頭は丸く、耳は小さく、目は丸くて大きく、顔の模様からも、ひょうきんな風貌です。


●体の割には大きな目が顔の正面に並んで位置し、サルらしくない顔つきをしています。
  

俺たち、ひょうきん族!

●体は寸胴で丸みを帯び、前足後足ともに同じ長さで、筋肉質です。
●尾は退化しており、毛の中に隠されています。
●ふわふわとした羊毛状の短い毛が、びっしりと体を包んでいます。この密集した毛は、原猿は他の霊長類と比べて基礎代謝が低いため〔Ialeggio 1989〕、体温が逃げないようにしているからです〔Junge 2003〕。
●指の数は、前足後足ともに5本ですが、前足の第2指は短いです。また、後足の第2指だけは鉤爪になっていますが、他の爪は人と同じ平爪になっています。

一本だけが鉤爪で、残りは全部平爪

●手や足の関節がよく動き、把握力は強く、長い時間、物をしっかりとつかむことができるようにできています〔Junge 2003〕。
  

絶対に離れない・・・つかむ力が半端ないっす(–;)

●歯の数は36本です。下顎の前歯は細く櫛のように萌出しているため、櫛歯と呼ばれ、昆虫を樹洞から掘り出すの有利な形、あるいは毛繕いに使用されているといわれています〔Junge 2003〕。
●ロリスは天敵から自分の身を守るために毒を持っています。肘から分泌腺される分泌物を自ら舐めて、口に含んで唾液と混ぜることで毒液にします。それを全身に毛ずくろいをしたり、その口で天敵を噛むむことで相手にダメージを与えます〔Matsuda et al.1972〕。母親が子供から離れる時には、子供の体全体を舐めて天敵に襲われるのを防ぐ役目もあります。この毒は雌雄とももっています。人が噛まれた場合は、軽くしびれたり、ひどく腫れることもあるので、十分に注意してください。

ロリスは毒をもつ唯一のサルです

●乳頭は2対(4個)あります。

2-3生殖器・繁殖

●雌雄鑑別は成熟していないと難しく、オスは生殖孔の下に精巣が収納されている陰嚢がみられます。
  
●メスの生殖孔(外陰部)はオスと似ており、突出しています。一見しただけでは間違えやすいです。
  

表:繁殖知識〔Rowe1996〕

項目 スローロリス ピグミースローロリス
性成熟 オス:17-20ヵ月齢
メス:9ヵ月齢
オス:17-20ヵ月齢
メス:17-21月齢
繁殖形式 周年繁殖
性周期:37-54日
周年繁殖
性周期:42.3(29-45)日
妊娠期間 約188日 約191日
産子数 1-2頭 1-2頭
離乳 5-7ヵ月齢 133(123-146)日

3飼育

サルの飼育をする心がまえを読んでください!

3-1飼育頭数

●単独生活をしているので、基本的に1頭で飼育をしてください。

3-2ケージ

●専用のケージがないので、猫やオウムなどの金属製の金網ケージで飼育しましょう。運動量はそれほど多くないので、極端に大きなものを用意する必要はないです。
●手先が器用なので脱走防止の為に、網目が細かく出入り口は開けられないように鉤をしてください。
●ケージ内には止まり木、エサ容器、給水器、小屋などをレイアウトを設置してください。

●樹上性であるため、高さのあるケージに、耐久性のある太い樹木や枝を止まり木として用意し、木々の間を移動できるようにしましょう(環境エンリッチメント)。
  
●昼は顔を隠すように身体を丸めて休むため、身体が隠れるくらいの大きさの小屋や巣箱を用意するか、あるいは布やタオルを与えると中で休みます。昼はケージを毛布などで暗くすると安心します。
●床敷は種類を問いません。小屋や巣箱で休むために、金網床でかまいません。

●手先が器用で人と同じように物を扱います。エサ容器はひっくり返さないように重い陶器製のものを選ぶべきです。

3-3温度・湿度・照明

●熱帯にいる動物なので、暑さに強く、寒さに弱いです。気温は最低でも26~27℃を保つようにして下さい。20℃以下になると休眠して、動かなくなります。
●冬の寒い時は、保温器具で寒さを防ぐ工夫をし、夏は冷房や送風などで温度が上がりすぎないように注意してください (温度・湿度)。
●夜行性の動物なので、日光浴をさせる必要はありません。
●高温多湿な環境な地域に生息していますので、飼育下では人にとって不快な環境かもしれません。
●夜行性の動物なので、夜に活動します。昼間は暗い部屋あるいはケージにカバーなどをかけるなどしてください (照明)。

表:温度・湿度

項目 数値
温度 26-30℃
湿度 50-80%

26℃以下はだめよ~だめだめ!

4食事

4-1エサ

●原猿用のペレット(モンキーフード)を主食に、野菜、果物、昆虫などをあげてください。基礎代謝率が低い動物で、過食や果物を与えすぎると、すぐに肥満になります。
果物や昆虫を多く与えるような食事メニューは、クル病などの骨の病気になりやすいです。原猿用モンキーフードが入手できない場合は、ドックフードなどの栄養が整ったエサをメニューに加えてください。

原猿用モンキーフードがない?妥協してドックフードならば許します!

●原猿用モンキーフードが入手できない場合は、ドッグフードをふやかしたものなどを補助的に与えてください。

4-2水

●モンキーフードをふやかして与えていると水をあまり飲まないかもしれません。
●壁掛け式の給水器かお皿で水を与えます。

5ケア

●ケージの中に動物をいれてエサを与えるだけという単調な飼育は、成長や健康維持、繁殖のみならず、精神的的なストレスの原因になります。
●動物が持つ野生本来の行動を発現できるような環境作りのために、動物はそれぞれ生息地に適応した体の特徴や生態を環境エンリッチメントに沿って考えてください。ロリスの場合、ケージを広くする以外に、夜行性であることがポイントになります。

夜遊び大好き!Dr.ツルとおんなじ🖤

●基本的に夜に起きて行動し、昼は熟睡しています。
●臆病でデリケートであるため、普段はのんびりとして大人しいですが、驚いた時などはすばやい動きで、飼い主を噛んだり、狭い隙間に入りこんだりしますので注意してください。大きな音や驚かすようなことは避けましょう。
●環境に馴れるまでの間は、そっとしておいてあげるのがよいです。
●他のサルと異なり、基本的に言葉を理解したり、意思疎通をすることは難しく、コミュニケーションをとるというよりは、ロリスの生活のタイミングや性格を知って、それに合わすような感覚でいてください。
●性格や飼育された環境により、まったく噛まないロリスもいますが、毒液が唾液に含まれているので噛まれないようにだけ注意しましょう。
●空腹時は目の前の物をエサと思い噛んだり、また、正面からくるも物に恐怖を抱き、攻撃するかもしれません。指などを顔の正面から近づけることはやめてください。

ロリスの性格とタイミングをつかんむまでは辛抱!

●長生きを目指すには、ぜひサルドック(健診)を受けましょう。

健康診断を希望であれば、エキゾチックペットクリニックまで、ご予約をおとりください

 

参考文献

■Ialeggio DM.Practical medicine of primate pets.Compend Contin Educ Pract Vet 11.p1252-1259.1989
■Junge RE.Prosimians.In Zoo and Wild Animal Medicine: Current Therapy 3.Fowler ME, Miller RE.eds.WB Saunders.Philadelphia.US.p378-389.2003
■Matsuda G,Maita T.et al.Amino acid compositions of all the tryptic peptides from the and polypeptide chains of adult hemoglobin of the slow loris (Nycticebus coucang).Biochemical studies on hemoglobins and myoglobins.X.Int J PROTEIN ReS4(6).405-13.1972
■Rowe N.The Pictorial Guide to the living primates.1st ed.Pogonias Press.New York.1996