グリーンイグアナの知らないといけない知識

恐竜みたいな姿をしている心優しいトカゲ
●グリーンイグアナは、単にイグアナと呼ばれるくらいポピュラーな大型のトカゲです。大型で恐竜を連想させる風貌をしていますが、草食性なうえ、性格もとても温厚です。
2m近くになる大型種です
●日本では約20年前にイグアナのブームが起こり、安い価格で販売されていたこともあります。当時は流通数もとても多く、販売価格も一時は1000円くらいになったこともあります。しかし、適切な飼育法が広まっておらず、多くが1~2年で亡くなっていました。
日本でイグアナブームあった?
●グリーンイグアナは成長とともに身が大きくなることから飼いきれなくなり、一部の飼育者は遺棄をすることがあります。そのため、日本の温暖な地方(石垣島など)では定着している可能性が示唆され、生態系への影響が懸念され、要注意外来生物に指定されています。なお、ワシントン条約の付属書II掲載種でもあります。
1分類・生態
1-1分類
分類:有鱗目イグアナ科グリーンイグアナ属
学名: Iguana iguana
英名:Green iguana
別名:タテガミトカゲ
1-2分布
メキシコから南米大陸北部
1-3生態
環境:多湿の熱帯雨林に生息しています。
行動
・昼行性であるため、昼間だけ活動をし、水辺に張り出した樹上に登って生活をしています。
・オスは1本の木に1頭で生活し、その木にメスを呼び寄せてハーレム状態の縄張りを作ります。
・基本的に樹上性ですが、時にエサを求めて地上に移動することもあります。
・樹上にいながら天敵の危険を感じると、水に飛び込んで泳いで逃走することもあります。
食性:草食性で、木や植物の葉、花、果実などを食べています。
寿命:野生では約8年ですが、ペットでは約15年という報告があります。
気に登るのが大好き!
1-4身体
全長:90~120cm(最大180cm)
1-5品種
●かつてグリーンイグアナは吻部にツノがある種類(Iguana iguana rhinolopha)とツノを欠く種類(Iguana iguana iguana)で亜種分けをされていました。しかし、野生でも亜種間の交配も行われているため、現在はIguana iguanaの1種類に統一されています。
●グリーンイグアナの繁殖(CB)個体には、アルビノ、アザンティック、エリスリスティックスなどが流通しています。代表的な品種を紹介します。
グリーンイグアナのブルーイグアナ?レッドイグアナ?
アルビノ
黒色色素が欠乏し、全身が白色のものもいますが、黄色色素が残っているために淡いクリーム色や黄色になることが多いです。
アザンティック
黄色色素が欠乏しているために青色を帯びた色になり、緑色に近い青色~きれいな青色まで幅があり、お腹のみが青色のこともあります。ブルーイグアナと呼ばれることもあります。
エリスリスティックス
赤色色素が特異的に多く、赤色が協調されています。レッドイグアナと呼ばれています。
2特徴
2-1性格・行動
●脳の体重に対する重量が最も大きな爬虫類なので、頭がよいです。飼い主を認識し、人によく馴れます。
●発情期以外は温和ですが、オス同士は大きな喧嘩をするので注意してください。
●個体同士のコミュニケーションは特徴的で、求愛ならびにデイスプレー、威嚇、縄張りの主張の際に、デューラップを広げたり、頭部を縦に振り動かす(ボビング:Bobbing)、攻撃をする際には噛みついたり、尾を打ちつけたりもします。
ボビングの動画を見て↑↑↑ 超かわいい
●特に発情したオスは狂暴で攻撃的になり、あたりかまわず噛みついてくるので注意しないといけません。
●落ち着いた状態でいると、舌を常に出していることが多く、舌を出して寝ていることもあります。その理由は分かりません。
あの~舌が出ていますけど?
2-2身体
●発達した大きな尾は頭胴長よりも長く、樹上で平衡感覚をとるのに役立っています。
●幼若体の体色は、名前のグリーンイグアナの通りに明緑色ですが、成体になるにつれて、くすんでくるため、灰褐色~黒褐色、オレンジ色になります。
グリーンでいるのは小さい時だけ・・・
●尾には太い黒色の縞模様が入っています。
●頭の後ろから尾にかけて棘状のタテガミのようなクレスト(Crest)がみられ、別名のタテガミトカゲの由来になっています。
●鼓膜の下に円形の大型の鱗(鼓膜下大型鱗:Subtympanic scale)がみられます。
タテガミと丸いホッペがいけてます!
●脱皮は皮膚の古い角質がはがれ落ちることです。トカゲは元の角質から新しい角質ができる時に、その間に休みがあるため、古い角質は浮いてはがれ落ちます。新陳代謝がよいと脱皮の頻度は短くなりますが、頻度の決まりはなく、環境や体調により、回数はかわります。グリーンイグアナは、体の各部位が所々にポロポロと脱皮します(部位脱皮)。
●喉の下に大きな襞(デューラップ:Dewlap)が発達しています。デューラップは特にオスに発達し、内部の舌骨で支持されています。興奮や威嚇の際にデューラップが広げられます〔Frye 1995〕。性的なシンボルなのでしょう。
喉下のデューラップは男らしさです!惚れるなよ
●指の数は前足後足ともに5本あります。
●グリーンイグアナの頭頂部の真ん中に第3の目があります。小型で透明な嚢状構造の円形の構造物が存在し、頭頂眼(とうちょうがん)(Pariental eye)と呼ばれています。頭頂眼を収容している孔を頭頂孔(とうちょうこう)と呼びます。実際は物をみることはできないですが、第3の目とも呼ばれる光を感受する場所で、明暗を感じたり、方向を感覚的にとらえています。頭頂眼と脳の一部が神経でつながっており、頭頂眼が光を感知して性ホルモンの産生を行う役目もあります。その他にも体温調節、ビタミンD産生を担っているという報告もあります〔疋田 2002〕。
えっ!頭に第3の目があるの?
2-3雌雄鑑別・繁殖
●成体になると二次性徴とディスプレイーで雌雄鑑別ができます。
●オスはメスと比べて身体がやや大きくなり、体色がオレンジ色を帯びることが多いです。
●オスは顔面側部の鼓膜下大型鱗がメスよりも膨らみ、正面からみるとおたふくのようにみえます。

オス

メス
発情したオスは頬が膨らみます
●オスは後頭部が瘤のように2つの膨らみがみられることもあります。
●オスのデューラップはメスよりも大きくなります。

オス

メス
●オスは大腿孔(だいたいこう)が発達し、蝋状の分泌物が蓄積して、テリトリー内の物やメスに擦りつけてマーキングを行います。メスは大腿孔が小さいか、ほとんどみえません。

大腿孔

オス

メス
確実な雌雄鑑別は後ろ足のイボイボ
●オスの尾の基部にはヘミペニスが収納されているクロアカサックがあるため、2つの膨らみが確認できることもあります。しかし、グリーンイグアナでは膨らみが僅かで、ほとんど分からないです。
●発情したオスは攻撃的になります。体を膨らませ、脚を踏ん張って体を持ち上げてより大きくみせ、相手に対して尾をたたきつけるようなこともします。怒らせると口を開け威嚇して、縄張り内に入ってきた何者に対しても噛みつくようになります。特にオス同士は激しい喧嘩をするので注意してください。
発情したオスは触らないで!
●発情したグリーンイグアナは生理の人間の女性飼育者を攻撃することが報告され、性的誘因の原因とされています。
生理中の女性は発情したオスのイグアナに襲われます?
●発情したオスは精液の乾燥した塊が総排泄孔に付着していることもあります。
●発情したオスの攻撃的な行動は求愛でもあり、メスを求めての性的行動でもあります。この時期のオスは触ることもできず、ましてや離れていても攻撃することもあるため、飼育者はケージの中に閉じ込めたままにするしかないです。
●オスのイグアナにマスターベーションのために、人の腕を貸したり、性欲処理目的の人形(イグアナフィギュア)をオスの個体の相手にさせたりしています。
オスのマスターベーションのときにはこの人形を・・・
●メスのグリーンイグアナは季節繁殖で繁殖する季節が決まっています。日本で飼育されているイグアナは秋~初冬に発情します。
●成熟したメスは、オスがいなくても無精卵を産みます。しかし、環境が卵を産むのに適していないと、卵胞が育ち、卵になる前に吸収するような現象がみられます(卵胞吸収)。多数の卵胞が発育するので、お腹が膨らんで、食欲が落ちることから、病気と間違いやすいです。
メスのイグアナは一人でも卵を産みます
●交尾はメスの背中にオスが乗って行われます。2本あるへミペニスの1本のみをメスの総排泄孔に挿入します。
表:繁殖知識
繁殖形式 | 卵生 |
性成熟 | 頭胴長:224-295mm〔Cole 1966〕 1.5ー3年〔Rodda 2003〕 |
発情期 | 季節繁殖 (北半球) 発情:12-翌1月 産卵:交配後約2ヵ月〔Rodda 2003〕 |
産卵 | 1回/年・最大70個/回 〔Rodda 2003〕 |
性決定 | 遺伝的性決定 |
長生きを目指すには、ぜひイグドック(健康診断)を受けましょう!
健康診断を希望であれば、エキゾチックペットクリニックまで、ご予約をおとりください
参考文献
■Barten SL.Lizards.In Reptile Medicine and Surgery.Mader DR ed. WB Saunders, Philadelphia.p47-61.1996
■Cole CJ.Femoral glands in lizards:A review.In Herpetologica22.199-206.1996
■Frye F.Iguana Iguana, Guide for Successful Captive Care. Malabar,Florida:Krieger Publishing Company.1995
■McKeown S.General husbandry and management.In Reptile medicine and surgery.Mader DR ed.WB Saunders Philadelphia.p9-19.1996
■Rodda GH.Biology and Reproduction in the Wild.In Biology,Husbandry and Medicine of the Green Iguana.Jacobson ER ed.Krieger Publishing Company.Florida.p1-27.2003
■疋田努.爬虫類の生理.爬虫類の進化.東京大学出版.東京2002