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チンチラの知らないといけない知識

 2018/10/20 チンチラ この記事は約 10 分で読めます。
チンチラ

チンチラは全てが変わっています

●チンチラは南米の限られた地域にだけいる特殊なげっ歯類で、独自の進化を遂げました。体形はもちろん、生理機能も特徴的ですので、知っておかなければならない知識がたくさんあります。
●チンチラは古代から南米のアンデス固有の動物で、ペルーのインカ族やチリ北部のアタケメニョス族はチンチラを毛皮や食肉目的で捕獲していました。16世紀頃、スペイン人がインカ族を征服するまではチンチラは原住民しか知られていませんでした。スペイン人はチンチラの毛を王様へ贈り、その後1828年から毛皮の商業利用で、ヨーロッパの市場に出回るようになりました。1枚のコートを作製するのに100枚以上の毛皮を使用し、1900年代初頭では毛皮のために絶滅寸前まで乱獲されました。野生の数が激減したが、現在は政府の保護下に置かれ、ワシントン条約第Ⅰ掲載種になり、国際間の取引きは禁止されています。しかし、日本で飼われているペットのチンチラは国内繁殖なのでワシントン条約の違法にはなりません。

チンチラには暗黒時代がありました

●チリの鉱山技師のアメリカ人、マティアス・F・チャップマン(Mathisas F.Chapman)氏はチンチラに興昧を引かれ、現地でチンチラを買い取って飼育を試み、そして1923年にアメリカにはじめて輸出した歴史があります。しかし飼育を始めて11年後、1934年チャップマンは亡くなりましたが、子供のレジナルド(Reginald Chapman)氏は繁殖に成功したのがペットのチンチラの始まりです。日本では1961年三島市の動物愛好家によって導入されたのが最初と報告されています〔富永1977〕。

チャップマンさんありがとう!

1分類・生態

●チンチラというと、猫のチンチラ、ウサギにもチンチラが存在しますが、ここではネズミの仲間であるチンチラ に関して詳しく解説します。

猫じゃね~よ!ウサギじゃね~よ!

●チンチラはアニメ映画の「となりのトトロ」のトトロのモデルになったともいわれています。よく見ると似ていますね。

1-1分類

ネズミ目(げっ歯目)チンチラ科チンチラ属
●学名:Chinchilla lanigera
●英名:Chinchilla
●ペットのチンチラはオナガチンチラ(Chinchilla lanigera)といわれていますが、近縁のタンビオチンチラ(C. brevicauda)やコスチナチンチラ(C. costina)や、あるいは交雑種ともいわれ、分類学的に論議されています。これらの分類や種類は論議され、確定されていません。

1-2分布

チリ北部
チンチラ分布地図

1-3身体

●頭胴長:25.4~35.6cm
●尾長:15.2~20.3cm
●体重:400~600g

1-4生態

環境
・南米大陸のアンデス山脈地帯西側に生息しています
・標高4500mの傾斜のある岩場で、寒冷(-15~-20 ℃)な乾燥地帯で〔Carpenter 1966 〕、降雨量も少ないため、エサとなる植物も少ない過酷な環境です。

チンチラは極寒の山に住んでいます

行動
・山の斜面の岩場などの乾燥地帯で生活をしています。
・12~100 頭の群れで生活をし、2~5家族が岩の割れ目などの巣穴に棲んでいます〔Hoefer 1994〕。
・夜行性の動物で夕方から活動を始めますが、昼に活動することもあります。

食性:草食性で、草の葉や茎、根、樹皮、サボテンやコケなどの植物質を食べ、雪解け水や岩場に結露した水滴などを飲んでいます。
寿命:野生での寿命は約10 年ですが、飼育下での最長の記録は17.2 年〔Weigl 2005 〕、一部の報告では20 年以上ともいわれています〔Nowak 1999〕。

チンチラは20年生きることができます

1-5品種

●チンチラは多くの毛色のバリエーションが流通しています。代表的な品種を紹介します。

ノーマル(野生色)

背中は灰青色で、お腹は白色を帯びています。灰青色は全体的に明るいものから純粋な灰色に近いものまで幅があります。目の周りや鼻先などに一部白色を帯びています。グレーとも呼ばれています。

バイオレット

全身が薄紫色をしており、とても綺麗な色で、高級感があります。

サファイア

バイオレットに比べて、青色や灰色が強く出ており、お腹が白色を帯びています。個体によって黒目やぶどう目をしています。

シルバーパイド

身体の色は白色がメインですが、頭や背中に灰色が混ざっています。

シナモン

全身が薄茶色をしており、目は赤目です。
  

ベージュ

シナモンと似ており全身が薄茶色をしており、目は黒目であることで鑑別します。
  

ホワイト

全身が白色で時おり灰色の毛が混じります。目は黒目です。なお、ホワイトは劣勢致死遺伝子を持っています。
 

アルビノ

黒色色素が欠乏しているため、全身が白色で、目は赤目です。
  

ブラックベルベット

全身が黒色で、胸からお腹は白色を帯びています。なお、ブラックベルベットは劣勢致死遺伝子を持っています。

エボニー

全身が黒色をしており、黒光りしてとてもきれいにみえます。
  

シールポイント

シャム猫の毛色に似ていることから命名され、体は白色で、耳と尾が黒色を帯びています。
  

2特徴

2-1習性

●警戒心が強いですが、好奇心旺盛で活動的な面をもち、意志表示も明確です。
●興奮したり、嫌なことをされると、「ギーギー」、「グーグー」と甲高い声をあげることもあります。
 

チンチラはギーギーと鳴きます

●夜行性の動物ですが、意外と昼間も活動的に動きます〔Hoefer 1994〕。

2-2身体

●耳と尾が大きく、四肢が細くて長いです。

●特に後足は前足と比べて発達しているため、大きな尾とともに跳躍に役立っています。なお、尾の先端にも長くて硬い剛毛が生えており、ヒゲと同じに感覚器官です。

●耳以外は細いしなやかな2~3cm の長さの毛で被われ、1 本の毛根から約60 本の細い毛が密生しています〔Walker  1975〕。厚い毛皮のコートをつくり、野生では高山にいるため、寒さに耐えています。
 
●皮脂からの脂性の分泌物は皮膚の乾燥を防いでいますが、毛が脂で絡まないように、砂浴びをして毛を整えています。
●ヒゲは重要な感覚器官です。触毛とも呼ばれ、岩の巣穴の中での障害物との接触、風の方向や強さなどを感じとる役目をしています。

チンチラはヒゲと尾が長いです

●肛門の頭腹側に1 つの肛門腺がありますが、その臭いは人には感じられないです。
  
●乳首は鼠径部と外側肋骨部に2対(4個)みられます。
●目は大きく、虹彩は縦長のスリット状をしています。その理由は分かりません。

●丸い耳は大きくて薄く、聴覚が発達しています。可聴域が人よりもかなり広いです。音の刺激に敏感な面もあるので、騒がしい音には注意してください。

●指の数は前後足ともに4本で、犬や猫のような肉球を備え、小さな平爪があります。
  
●前足には2つの発達した偽指(ぎし)と呼ばれる突出部分がみられ、親指の代わりに使用して物をつかむことができます。
  

器用に物をつかみます

●歯は前歯と奥歯があり、全部で20本です。前歯も奥歯も常生歯で、生涯にわたり伸び続けます。前歯のエナメル質は黄色や橙色で、これは銅や鉄などの色素がカルシウムと一緒に取り込まれるためです。

●胃は深い袋状の形をしており、食道とつながる噴門部(入口)と十二指腸とつながる幽門部(出口)が接近していて、それぞれの直径が細いのが特徴です。このような胃の形のために、チンチラは吐くことができません。

チンチラは吐くことができません

●チンチラの消化器で最も特徴を持つのが盲腸です。お腹の大半を占めるほど大きいです。盲腸にはたくさんの微生物が共存し、繊維の細胞壁を壊し、消化吸収を行う発酵タンクとしての重要な役割をしています。
薬に対して敏感で、特に抗生物質の内服投与により腸内細菌叢が崩れやすいです。その結果、悪玉菌が増えて腸炎を起こし、下痢や食欲不振がみられます(抗生物質性腸疾患)。悪玉菌が毒素を出して、全身状態が悪化して死亡するようなこともありますので、注意してください。

抗生物質の内服投与は注意して下さい

●盲腸では盲腸便と呼ばれる柔らかい便がつくられ、チンチラはこれを直接肛門から食べ、再び消化吸収します。

2-3雌雄鑑別・繁殖

●雌雄鑑別は難しくはありません。オスは生殖孔と肛門の距離がメスよりも長く、わずかな膨らみをもつ陰嚢がみられます。また、生殖孔の開口部を押すと陰茎が露出することで雌雄の鑑別ができます。
  
●メスは生殖孔と肛門の距離がオスよりも短いです。しかし、メスの生殖孔は円錐形で、一見するとオスの陰茎と似ていますので、注意して下さい。
  
●チンチラは野生では繁殖する季節が決まっていますが、飼育下では1年中いつでも繁殖することが可能です。
●繁殖の際にはオスとメスを各1頭ずつにさせるか〔富永 1977、1 頭のオスに4~5 頭のメスをあてがうハーレム方法をとってください〔Zeinert 1983〕。しかし、チンチラの雌雄での相性の選択が難しく、相性が悪ければすぐにケンカが始まります。メスにオスを引き合わせるには、まず発情しているメスのケージのとなりにオスのケージを置き、数日間様子をみて、メスがオスに対して無関心だったり嫌がっていなければ、オスをメスのケージに入れてみます。
●メスは発情期に入ると外部生殖器が腫大します。オスが背中に乗るか、背中に手を乗せると、背中を弓なりに反らす仕草をします(ロードシス:Lordosis)。
●発情したオスはメスの臭いを嗅いで、興奮してきます。交尾ができているかの確認は、メスの陰部に膣栓がついているか否かで判定できます 。
●妊娠期間は105~118 日と、他のげっ歯類と比較して長いです〔富永 1977。お腹の中で子を大きく育ててから出産するというシステムをとっているのです。

妊娠期間が長いです

●新生子は目が開いて毛も生え、と早熟した状態で生まれてきます〔Hillyer et al.1997〕。
    

表:繁殖知識

性成熟 メス:8ヵ月齢,オス:8.5ヵ月齢〔Weir 1970〕
発情形式 野生では季節繁殖(南半球:5-11 月)〔Walker 1975〕

飼育下では周年繁殖

性周期:30-50 日〔Hillyer et al.1997〕

妊娠期間 105-108日〔富永 1977〕
産子数 2(1-5)頭〔Hillyer et al.1997〕
離乳 6-8週齢〔Hillyer et al.1997〕

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参考文献

■Hillyer EV,Quesenberry KE,Donnelly TM.Biology,Husbandry,and Clinical Techniques.Guinea Pig and Chinchillas.In Ferrets,Rabbits,and Rodents.Clinical Medicineand Surgery.Hillyer EV, Quesenberry KE.eds.WB Saunders. Philadelphia.US.1997
■Hoefer HL.Chinchillas.Veterinary Clinics of North America. Small Animal Practice 24(1).p103-111.1994
■Nowak R.Walker’s Mammals of the Warld. Johns Hopkins University Press.Baltimore.1999
■Zeinert K.Husbandrg of chinchillas.Veterinarry Medicine/Small Animal clinician Aug.p1292-1294.1983
■Walker EP.Mammals of the World. 3rd ed. Vol.II. Johns Hopkins University Press.Baltimore.US.1975
■Weir BJ.Chinchilla.In Reproduction & Breeding Techniques for Laboratory Animals.Hafez ESE ed.Lea&Febiger.Philadelphia.p209-223.1970
■Weigl R.Longevity of Mammals in Captivity from the Living Collections of the World.Kleine Senckenberg- Reihe 48 Stuttgart.2005
■富永聡、辻紘一郎.チンチラ.実験動物技術編.田嶋嘉雄編.東京.朝倉書店.1977

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